レイ・ダリオ推奨ポートフォリオをETFで自作する【オール・ウェザー戦略】
- 2022.06.03
- 投資
「どの季節でも生き残る」ポートフォリオの設計思想——オール・ウェザー戦略と私の資産構成
市場がどう動くかを正確に予測できる人間はいない。インフレが来るのか、デフレが来るのか。景気が拡大するのか、後退するのか。この4つの組み合わせのどれが次に訪れるかは、世界最高の投資家でさえわからない。
この「わからない」という前提から出発した投資戦略が、世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター社を率いたレイ・ダリオ氏のオール・ウェザー戦略(オール・シーズンズ戦略)だ。私のポートフォリオはこの思想を基盤に設計している。この記事では設計思想と資産クラスの構成比率を説明する。各資産クラス・各銘柄の詳細は、末尾のリンクから個別記事を参照してほしい。
オール・ウェザー戦略とは何か
オール・ウェザー戦略の出発点は、経済には4つの「季節」があるという認識だ。
| インフレ局面 | デフレ局面 | |
|---|---|---|
| 局面 | インフレ局面 | デフレ局面 |
| 景気拡大 | コモディティ・株式 | 株式 |
| 景気後退 | 金・コモディティ | 米国債・現金 |
どの季節に強い資産を組み合わせることで、どの局面が来ても資産の核を失わない構造を設計する。リーマンショックが起きた2008年、S&P500が約37%暴落した局面でも、オール・ウェザーポートフォリオの下落は約4%にとどまった。
ただし私のポートフォリオはダリオのオリジナルをそのまま踏襲しているわけではない。法定通貨の信用毀損への備えとして実物資産の比率を厚くし、時代の転換点(AI・エネルギー・新興国成長)へのオプションとしてリスク資産を加えた、自分なりの拡張版だ。
設計の3原則
構成比率の前に、設計の前提を共有する。この3原則がポートフォリオ全体の判断軸になっている。
① 原始に帰れ(実物資産優先)
法定通貨の信用は毀損する。通貨の過剰供給・債務膨張が起きても価値を維持する実物資産(コモディティ・貴金属)をポートフォリオの核に置き、購買力を死守する。金融資産は実物資産の上に乗るオプションである。
② 複数軸分散
景気・インフレ・通貨という3軸で無相関・低相関の資産を組み合わせる。世界的なパラダイムシフトが起きても資産の核を失わない構造を設計する。
③ 保有ナラティブの定期検証
一時的な価格の上下ではなく、「保有の前提条件(ナラティブ)が崩れていないか」を毎月評価する。ナラティブが崩れた資産は比率に関わらず手放す判断をする。
資産クラス別の構成比率
現在の目標構成比率は以下の通りだ。コモディティを核(35%)に置き、現金・日本株・米国債・米株式が続き、新興国・暗号資産をオプションとして限定的に組み込んでいる。
| 資産クラス | 目標比率 | 株式相関 |
|---|---|---|
| コモディティ | 35% | 0.0〜0.3(低〜無相関) |
| 現金 | 14% | 0.0 |
| 日本株式 | 13% | 高相関 |
| 米国債 | 10% | -0.2〜+0.1(逆相関) |
| 米国株式 | 10% | 高相関 |
| 金融株式 | 8% | 高相関 |
| 新興国株式 | 5% | 中〜高相関 |
| 暗号資産 | 5% | 0.2〜0.6 |
コモディティが35%という比率は、一般的なポートフォリオから見ると異質に映るかもしれない。これは「原始に帰れ」という設計原則の直接的な表れだ。株式市場がパニックになる局面でも価値を保つ実物資産を核にすることで、どの季節でも資産の核を失わない構造を作る。
各資産クラスの役割と内訳
コモディティ(35%)——インフレ防御の核
インフレ局面でも購買力を死守するための中核資産。貴金属・資源株・エネルギー・農業商品で構成する。
| 銘柄 | クラス内比率 | 相関特性 |
|---|---|---|
| 金 | 50% | 株と低〜負相関 |
| 銀 | 18% | 株と中相関 |
| プラチナ | 5% | 株と中相関 |
| XLE / OXY(エネルギー) | 15% | 原油価格と高相関 |
| Rio Tinto / BHP(資源株) | 6% | 株と高相関 |
| 農業商品 | 3% | 他資産と無相関 |
金はポートフォリオの最終的な安息所。中央銀行の買い増しや地政学リスクの常態化に備え、無国籍通貨として機能させる。銀は貴金属としての希少性に加え、太陽光パネル等のグリーンエネルギー需要という工業需要の側面を持つ。農業商品は金融市場のパニック時にも他資産と無相関な動きをする点を評価している。
→ 各銘柄の詳細:(個別記事リンク追加予定)
現金(14%)——選択権の確保
暴落時や価格の歪みが発生した際に迅速に動くための流動性枠。利益を生まないが、「何もしない選択肢」と「次の動きへの弾」を同時に確保する。ポートフォリオ全体のボラティリティを制御する緩衝材でもある。
日本株式(13%)——デフレ脱却と実物経済の複合エクスポージャー
| 銘柄 | 保有の核 |
|---|---|
| TOPIX | 日本経済全体の底上げを個別銘柄リスクなく取り込む |
| 三菱商事 / 三井物産 | 世界の資源利権と物流網。実物経済の変化を多角的に捉える |
| 金融株式 | デフレ脱却後の金利上昇局面での収益性改善 |
商社はコモディティ価格の上昇局面でも恩恵を受けつつ配当が出る、実物資産と株式の中間的な性質を持つ点を評価している。
→ 各銘柄の詳細:(個別記事リンク追加予定)
米国債(10%)——パニック局面の保険
深刻な景気後退・デフレリスクへの保険。株やコモディティが同時に売られるパニック局面で、金利低下に伴う債券価格の上昇が資産の急落を相殺する。株式と逆相関に動く唯一の主要資産クラスであり、ポートフォリオ全体のバランサーとして機能する。
米国株式(10%)——AI・技術革新と地政学ヘッジの成長エンジン
| 銘柄 | 保有の核 |
|---|---|
| VTI | 米国経済全体への分散投資。個別銘柄の浮沈に左右されない |
| SMH / MSFT / GOOG | AI革命が続く限り指数関数的な成長が期待できる半導体・テック |
| LMT / NOC(防衛) | 地政学リスクの常態化に伴う国防予算という景気中立の安定需要 |
防衛株は景気循環に左右されにくい国防予算を収益源とするため、リスクオフ局面でも安定しやすい。地政学的緊張が常態化する現在、景気中立的なセクターとして米国株枠に組み込んでいる。
→ 各銘柄の詳細:(個別記事リンク追加予定)
新興国株式(5%)——景気拡大局面のオプション
| 地域 | 保有ドライバー |
|---|---|
| インド(Nifty50) | 巨大な内需市場とデジタルインフラ整備。21世紀最大の成長ストーリー |
| 中国(CXSE) | 政治リスクを内包しつつ、ハイテク企業の社会実装速度を評価 |
| ベトナム(VNM) | チャイナプラスワンの製造業流入と若年人口による消費拡大 |
| インドネシア(EIDO) | 豊富な資源と2.7億人の人口を背景とした内需成長 |
| ブラジル(EWZ)/アフリカ(AFK) | フロンティア市場がグローバル経済に組み込まれる際の先行者利益 |
新興国は景気拡大局面の受益資産として組み込んでいる。ただし「新興国」をひとまとめに持つのは設計として粗い。人口動態・地政学的ポジション・制度的成熟度の3軸でスクリーニングした上で、各国固有のドライバーを根拠に保有している。
→ ベトナムETF(VNM)の詳細:なぜ私はVNMを持ち続けるのか
→ 他銘柄の詳細:(個別記事リンク追加予定)
暗号資産(5%)——既存金融システム外のオルタナティブ
| 銘柄 | 保有の核 |
|---|---|
| Bitcoin | 発行上限が規定された「絶対的希少性」。法定通貨の信任が揺らぐたびに輝くデジタル・ゴールド |
| Ethereum | スマートコントラクトによる金融・契約の書き換えOSとしての可能性 |
既存の金融・銀行システムに依存しない「デジタル・オルタナティブ」として、限定的な比率で組み込む。高いボラティリティは前提であり、「核を失わない」ことを担保した上でのオプションとして扱う。
この構成が「壊れない」理由
各資産クラスの相関関係を整理すると、この構成の耐久性の理由が見える。
| 局面 | 上昇する資産 | 下落する資産 |
|---|---|---|
| 景気拡大 × インフレ | コモディティ・資源株・新興国株 | 米国債 |
| 景気拡大 × デフレ | 米国株・日本株 | コモディティ |
| 景気後退 × インフレ | 金・農業商品・現金 | 株式全般 |
| 景気後退 × デフレ | 米国債・現金 | 株式・コモディティ |
4つの局面のどれが来ても、全資産が同時に暴落する構造になっていない。これがオール・ウェザー戦略の本質であり、私のポートフォリオがこの設計を採用している理由だ。
ただし「壊れない」は「損しない」ではない。各局面で下落する資産は必ずある。この設計が目指すのは「資産の核を失わないこと」であり、市場のどの季節でも生き残り続けることだ。
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